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2017.08.30 (Wed)

午前、いや午後12時。
必要な書類だけを入れたレディースバックを持ち、彼女は屋敷を出た。
街頭を駆け抜けるように、足取りを早める。
片手に付けた高級そうな腕時計の時間を確認しながら。

…表情を未だ真っ赤に染めながら。


「あの馬鹿者めが……!!」

一時間前ほど前の場面が蘇り、思い出す度に憤る。
執事から告げられた言葉の怒りはとっくに上書きされ
代わりに今は触れてきた事に対して、頭の熱が治まらなかった。
足早に動いているのと、この事で息が切れる。余計なこと、ばかり。
予定時間の30分前には到着しておかなければ気が済まないというのに。
余裕を持って、行動できるようにと教えられてきたというのに。


破ってはいけない。
気持ちの焦りが、腕時計の針の音を大きく聞こえさせる。
あれからも無駄なやり取りをしてたせいで、このざま。

────喉も渇くし、散々だ。
執事め、覚えていろ。
握り拳を作って、アイリスはひたすら駆け足に進む。目的地まで。





「すまない、待たせてしまった…!」

カランカラン。扉に付けた鈴の音が鳴る。
開けた途端に冷気が流れ込む。外とは、えらい違いだ。
軽い天国と地獄を感じる。こんな優しいものでは、ないだろうが。

店内には今日も優雅、煌びやか、華やか、鮮やかな服が並べられている。
そう、此処は女性専門の洋服店。
子供用から大人用まで何でも揃えられている、女性の為だけに建てられた店だ。

しかし、これは彼女が着るためにこの店までやってきた訳じゃない。
ただ、購入という決まってある目的だけを持って。



「あらいらっしゃい、アイリスちゃん!」
野太い声がカウンターの奥から聞こえてくる。
どう聞いてもメルヘンチックな店には似付かわしくない声だ。
聞く度、つい声の先を振り向いてしまう。
…この店で間違いなかったかと、不安が過ぎるからだ。


「ちょっと待ってね。今お顔を見せるし、お茶も持ってくるから」
「大丈夫だ。待たせたのは僕の方…」
「いいのいいの、そんなの気にしないわ」

上機嫌そうに鼻歌を唄いながら来客である彼女へのお持て成しの準備。
スプーンで器内をかき混ぜる金属音が見事にリズムを刻む。
きっと、母国の音楽だろう。
この国では聞き覚えのないものだから。


お盆にお茶を淹れたお椀を置く音と共に、姿を見せるのは高身長で筋肉質の男性。
そう、彼こそがこの店の主。


名前を『ミスター、テシガワラ・リンタロウ』


「丁度故郷から甘い和菓子送ってきてもらったの。遠慮無く食べて頂戴」
「いや、お構いなく。ミスター」
「あらやだアイリスちゃんったら~!」


「私は『ミ・セ・ス』でしょ?も~気持ちは分かるけど間違っちゃ駄目よ~」


……もとい『ミセス、ナデシコ』
東洋の国からこの地に訪れ、ファッションデザイナーとして活躍している洋服店の店主だ。

テーマ : 自作連載小説 - ジャンル : 小説・文学

22:22  |  小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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