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Streich

2017.08.18 (Fri)

「…貴様、訂正しろ」
執事の言葉にアイリスは執事に近寄り、胸元のネクタイを掴む。
身長差の為に主は背伸びをしながら。
見た目だけなら微笑ましく見えそうな図だが、彼女の取った行動は真剣だった。
反論の意を示す、ネクタイを掴む力は彼女が持てるだけの力を出して。

睨み付ける視線を向けながら、アイリスの声には明かな怒りが見えていた。


「訂正も何も事実ですので」
「何だと…」
フィデリオは涼しい表情を見せながらの返答はアイリスを余計に苛立たせた。
軽くあしらう、仕方なしに会話に乗る。
普段の彼女ならそう対応しただろうが、今回の件にはあまりに納得のいかない事だっただけに
感情を抑えきれずにいた。


柔…この場合なら弱々しい、しっかりしていないという使い方で間違いないはず。
だからこそ苛立ちの感情を表に出す。自分では感じていないからだ。
執事から視線を一度たりとも外さず、口許に力を入れ歯軋りまで聞かせる。
二人の顔付きは、対照的すぎた。


日常生活や仕事面でいつそんな姿を見せたことがある?
必要最低限の家事だけは執事として任せることはあるが、協力しろなどと言った覚えはない。

執事として主の傍にいることで僕の全てを知り尽くしているとでも?

所詮、日々の生活状況を見て憶測で語っているのか?


「私以上にご主人様を分かっている方はいません、そう自負しております。

 ですから、私は柔だと言うのです。」
首を左右に振って、諭すかのように喋りかけてきて。


たかが執事である貴様に何が分かる。
それだけのことで見透かしているとでも言うなら、大いに違うと告げてやる。


虫唾が走る。
僕の全てを知っているような、生意気な口を利く執事に。


「…執事の分際で、僕を語るな!」
声を荒げる。今は、執事が忌々しいとさえ思って。


お前もまた、僕をただの『お嬢様』扱いするのか。

結局あの使用人達と変わらないのか────



もういい。と、ネクタイを掴む手を離してアイリスは改めて場を離れようとした時。


背後からの気配を察知するのが、遅くて。


………気付いた頃には、執事の手は僕の胸元に手を添えていた。


「ほらこの通り。ご主人様の身体は大変柔でございます」


僕は、声を出すより先に目の前にいる執事の膝を思い切り蹴り上げていた。

テーマ : 自作連載小説 - ジャンル : 小説・文学

16:39  |  小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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