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2017.07.26 (Wed)

──────もう、二年前だ。

大好きな花を目の前にすると記憶が強制的に蘇る。
記憶の箱に鍵をかけようとこじ開けられてしまう。
当時ほどでなくても、胸の奥は苦しいままだ。
明るい表情などではおれず曇りがかった、暗い表情。

だけれども、来ないわけにはいかない。
使命などと大層な言葉で言い表したくはないが、僕だけの仕事。


あの日以来、決めたこと。
僕自身が管理する花園、他の人間に管理なんてさせたくない。
どれだけ辛い思い出が頭に流れようと譲れない、譲らない。
アヤメの花だけは、誰であろうと手入れはさせない。


此処の水やりを任せたくない、肥料を与えてほしくない。
量を誤って花の寿命を縮められたくない。
綺麗な色を失わせたくなんてない。


土を替えられたくない、花に触れてほしくない。
替える際、葉や根本を傷付けられたくない。


此処は踏み入れられたくない。
来客だろうが許しはしない。執事にも、禁止させている。



……誰も、信用なんてしていないから。


最愛の両親が最も愛した花に両手を合わせ、ただ一人、アイリスは黙祷する。

テーマ : 自作連載小説 - ジャンル : 小説・文学

18:46  |  小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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